住宅ローンの組み直しとは?借り換えのメリット・デメリットと注意点

いま契約している住宅ローンは、何年前に契約したものでしょうか? 平成28年1月29日、日銀のマイナス金利導入発表を期に、住宅ローン金利は低下し続けています。契約中の住宅ローンを組み直しすることにより月々の返済額や返済総額を抑えることができ、家計にも「ゆとり」ができるかもしれません。

この記事では住宅ローンの組み直しの基礎から、そのメリットとデメリット、および注意点をご紹介します。これまでにない低金利時代における「お得なお金(おかね)」との付き合い方を知っていただく一助になれば幸いです。

【目次】
住宅ローンの組み直しとは?
住宅ローンを組み直すメリット・デメリット
住宅ローンの組み直しを実施するときの注意点
住宅ローンの組み直しで家計に「お得」と「ゆとり」を

住宅ローンの組み直しとは?

住宅ローンの組み直しを行うことで、返済総額の圧縮、毎月の返済額の軽減、借入期間の短縮、といった家計にも嬉しい効果が期待できます。ここでは住宅ローンの組み直しの意味と住宅ローンを組み直す主なシーンをご紹介していきます。

住宅ローンの組み直し(借り換え)の意味

住宅ローンの組み直しとは、住宅ローンの返済期間中に一括繰上返済で完済して別の住宅ローンに切り替えることです。

既存の住宅ローンの残債は新しい住宅ローンの融資金を利用して完済し、その後は金利の低い新しい住宅ローンを返済していきます。またこの行為を「借り換え」と呼ぶこともあります。

住宅ローンを組み直す主なシーン

住宅ローンの組み直しは次のようなシーンなどで、利用効果が期待できます。

「金利が高くて毎月の支払いが苦しく、利息を圧縮させたいとき」
「収入の減少により既存の住宅ローンの返済方法変更を申し出たが断られたとき」
「段階的に金利が上がる住宅ローンを契約していて、上昇するタイミングが迫っているとき」
「繰上返済を予定していたが、組み直しを行ったほうが受けられる恩恵が大きいとき」

また、国土交通省が発表した「平成30年度民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」によると、借り換え向け住宅ローンの割合は、全体の新規貸出額に対して3.2%(平成29年度)の割合となっています。

参考:「平成30年度民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」(国土交通省)

住宅ローンを組み直すメリット・デメリット

住宅ローンの組み直しによるメリットは多くの人にインパクトがある一方、場合によってはデメリットを感じる方がいらっしゃるかもしれません。ここでは主なメリットとデメリットをお伝えします。

住宅ローン組み直しのメリット

令和2年においてもなお、日銀によるゼロ金利政策は継続しており、これに伴い住宅ローン金利も変動0.3%台、期間固定(3年、5年、10年)0.3%〜0.5%台という相変わらずの低金利で推移しています。このような金融政策を背景に、住宅ローン低金利時代における組み直しのメリットを解説していきます。

月々の返済額を抑えられる。

金利の低い住宅ローンに組み直した場合、利息の圧縮効果が見込めることから、返済額に占める利息の割合が減少し、月々の支払い額が下がる返済額軽減型のメリットがあります。一般的に住宅ローンの組み直しで返済額が抑えられるのは、返済期間が10年以上ある方、返済残高が1,000万円以上ある方といわれています。また、現在の住宅ローンと組み直し後の住宅ローンに1%以上の金利差がある方もその可能性があります。

返済期間を短縮できる。

住宅ローンの組み直しを行う場合、返済額を変えずに、返済期間を短くすることも可能です。返済期間が短くなれば、利息の合計額が減り、トータルの支払額が減少する期間短縮型のメリットがあります。

団体信用生命保険(団信)の内容を変更できる。

団体信用生命保険は、それぞれの保障において該当する所定の状態になった場合に債務の返済が不要となる生命保険のことを言います。

これまでの住宅ローンに付帯されていた団体信用生命保険の保障は、ローン組み直しにより終了するため、新しい団体信用生命保険に加入することになります。強制加入、任意加入は銀行など金融機関により異なりますので確認してみてください。

最近の団体信用生命保険の保障内容はとても充実しています。保障内容は取り扱っている銀行など金融機関により異なりますが、介護保障、3大疾病保障、身体障害保障、死亡保障などが付保されており、配偶者が保障を受けられるものもあります。

リフォーム資金も同時に借り入れできる

家が古くなっていてリフォームを実施したい場合にも、住宅ローンの組み直しが選択肢の一つとなります。一般的にリフォームローンを組むより住宅ローンのほうが金利が低く、分けて借りるよりも負担を抑えやすくなります。ただし、利用条件が設けられていることが多いので、こちらも事前に金融機関に相談してみてください。

住宅ローン組み直しのデメリット

住宅ローン組み直しのデメリットは、諸費用が発生することです。住宅ローンの組み直しをする際は、住宅ローンの契約に関する費用だけではなく、現在の借り入れの繰上返済手数料や抵当権抹消登記の費用などがかかります。これらの諸費用の総額は、一般的に数十万円かかると言われています。

また、金利の下げ幅が小さい場合は、逆に支払総額が増えることもありますので注意が必要です。借り換え先候補の金融機関に、返済シミュレーションを依頼して検討しましょう。

住宅ローンの組み直しを実施するときの注意点

最後に、住宅ローンの組み直しを実施するときの注意点をお伝えしていきましょう。「返済額の減額などメリットがあるか」「所得税での控除適用があるのか」「団体信用生命保険の保障内容は」など、各種要件を把握しておくことが必要です。

組み直し時にも融資審査がある

住宅ローンの組み直し時にも、初めて住宅ローンを契約したときと同様に融資審査が行われます。契約者の勤務状況、経済状況、与信などが変化した場合、審査に通過できない可能性があります。また、基本的に同一の金融機関で別の住宅ローンへの組み直しは行えないか、できてもメリットが少ないです。

審査には一定の時間がかかります。既存の住宅ローンの返済が厳しく、延滞しそうなタイミングで組み直しを申し込んでも、融資が間合わない可能性があるため、余裕を持って行動を起こす必要があります。

住宅ローン控除が最大限受けられないことがある

住宅ローンの組み直しをした場合、一定の要件を満たさないと住宅ローン控除が認められません。組み直しによって住宅ローン控除が認められる一定の要件は、次のすべての要件を満たすケースです。

「新しい住宅ローン等が当初の住宅ローン等の返済のためのものであることが明らかであること」
「新しい住宅ローン等が10年以上の償還期間であることなど住宅借入金等特別控除の対象となる要件に当てはまること」

参考:「No.1233 住宅ローン等の借り換えをしたとき」(国税庁)

健康状態によっては団体信用生命保険に加入できないケースがある

契約者の身体上に何らかの疾患がある場合、団体信用生命保険に加入できないことがあります。銀行など金融機関によっては団体信用生命保険の加入を融資の条件としているところがありますので、事前に確認しておいたほうがよいでしょう。

なお、フラット35は団体信用生命保険の加入を任意としているため、団体信用生命保険に加入できない状況であったとしても住宅ローンを組める場合もあります。

住宅ローンの組み直しで家計に「お得」と「ゆとり」を

住宅ローンの組み直しでより低金利な住宅ローンを選択すれば、返済の負担が少なくなり、家計に「お得」と「ゆとり」が生まれます。また、団体信用生命保険の充実保障も期待できるでしょう。

コロナ禍もあって、当分の間は低金利政策が続くと予想されます。ですが、定石が通用する局面ではなく、実際に令和2年3月から4月にかけては長期固定金利が上昇しました。この時代に合わせた住宅ローンの組み直しを検討し、将来へのインフレヘッジ担保としておくことが賢い家計のあり方と言えるでしょう。

監修

山田 浩(やまだ ひろし)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士・CFP認定者

青山学院大学卒業後、大手ゼネコン勤務を経てIT関連会社を設立。財務会計システムの上流工程エンジニアとして数多くのシステム構築を手掛ける。現在は、マネーコンサルティング業務にベクトルを傾け、パーソナルファイナンス研究事務所 & techの代表としてとして活動中。

関連キーワード
  • 【フラット35】子育てプラスが2月より開始!制度の概要と利用のポイントを紹介
  • 【2024年】住宅ローンと併せて利用したい補助金まとめ
  • 【2023年度】変動金利と固定金利の違いとは?金利タイプの選び方と今後の動向
  • 住宅ローンがあるけど引っ越したい場合どうすればよい?
  • ボーナス払いで住宅ローンを繰り上げ返済してもよいの?仕組みやメリットを解説
  • 住宅取得資金贈与の非課税は、タイミングを逃さないよう注意!
  • 住宅ローンの借り換えタイミングはいつがよい?判断のポイントと気をつけることを解説
  • 40年の住宅ローンを組んでも大丈夫?返済年数が長い場合のメリットとデメリットを整理
おすすめの記事