住宅ローンを頭金なしで組むメリットと借入額が増えるリスク

マイホームを購入するために、何年もかけて計画的に購入資金を積み立てているという方も多いでしょう。積み立てた資金を一部でも頭金として支払えば借入額を少なくすることができ、住宅ローンを借りると発生する利息額も抑えることができます。しかし、月々の生活費や家賃を支払いながら購入資金の積み立てをするのは、なかなか大変ですよね。

そこでこの記事では、頭金が貯まっていないままでのマイホーム購入について、頭金なしで住宅ローンを組むメリットとリスクを解説します。

【目次】
頭金なしでも住宅ローンは組める?
住宅ローンを頭金なしで組むメリットとリスク
住宅ローン利用時に頭金の有無を決める際の注意点
頭金あり・なしは長期的な収支計画をもとに考えましょう

頭金なしでも住宅ローンは組める?

頭金が0円の場合、マイホームの購入資金を全額住宅ローンで準備することになります。そもそも住宅ローンは、頭金なしでも組むことができるのでしょうか。

住宅購入時の頭金とは

住宅を購入する際のお金は「頭金」「住宅ローン」「諸費用」の3つに分けられます。そのうち頭金とは住宅価格のうち、自己資金でまかなう部分のことをいいます。自己資金で不足する部分は、住宅ローンを利用して支払うのが一般的です。

住宅ローンを借りると利息の支払いが発生するので、頭金を多く用意できれば住宅ローンの借入額を抑えることができ、総支払額が少なくなります。一般的に、頭金は住宅価格の1割以上が望ましいとされています。

たとえば、住宅価格が4,000万円のマンションを購入する際には、頭金は400万円以上が目安です。これとは別に、物件価格の1割程度の諸費用が発生します。諸費用は現金で支払うことが多いため、事前に準備する自己資金は、頭金と合わせて物件価格の2割以上が望ましいと考えておきましょう。

なお、国土交通省の「令和元年 住宅市場動向調査 報告書」で住宅を購入した人の頭金(自己資金)の額(平均額)や自己資金比率の平均値が発表されています。

購入価格 自己資金 自己資金比率
注文住宅 4,294万円 826万円 19.2%
分譲戸建 3,644万円 801万円 22.0%
分譲マンション(新築マンション) 4,180万円 1,317万円 31.5%
中古戸建 2,324万円 829万円 35.7%
中古マンション 2,552万円 891万円 34.9%

※上記のデータはいずれも一次取得者の平均値

参考:「令和元年 住宅市場動向調査 報告書」

頭金がなくても住宅ローンは利用可能

住宅購入希望者の中には、貯金を残すために頭金なしで購入したいと検討している方や、十分な頭金を用意できない方もいるでしょう。住宅購入時に準備する自己資金は住宅価格の2割以上が目安と説明しましたが、頭金なしでも住宅ローンを利用することは可能です。

なお、住宅価格の全額をローンでまかなうことを「フルローン」と呼びます。また金融機関によっては、住宅ローン契約時にかかる諸費用も合わせて借入れることができる場合があります。なお、諸費用まで含めて借り入れることを「オーバーローン」と呼びます。

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住宅ローンを頭金なしで組むメリットとリスク

ここでは頭金を用意せず、住宅価格の全額の住宅ローンを組むメリットとリスクについてご紹介します。両面を理解したうえで、自身に合った方法を選択しましょう。

頭金なしで住宅ローンを組むメリット

欲しいと思ったタイミングで住宅を購入できる

頭金が貯まるまで住宅購入を控えていると、理想に近い物件が売りに出されたときに買うタイミングを逃してしまったり、頭金が貯まったときに欲しい住宅がなかなか見つからなかったりするおそれがあります。購入を先延ばしにしたために住宅ローン金利が上昇して、結果的に総支払額が増えてしまうというケースも考えられます。

一方で頭金を貯めてから住宅を購入すると、貯蓄ができるまで家賃を支払い続けることになります。住宅価格に加えて頭金を貯めるまでの期間の家賃が発生し、合計の負担額が増えることもあります。

このことから「今」購入したケースと数年間かけて頭金を用意するケースで比較したうえ、どちらのほうが少ない負担となるのかを考えると良いでしょう。また、頭金が貯まるのを待たずに住宅ローンを契約してマイホームを購入すれば、それだけ完済年齢が早くなり、余裕を持って老後を迎えることができるというメリットもあります。

手元に資金を残せる

頭金を多く支払うことで住宅ローンの借入額は下げられますが、短期的に見ると貯金が少なくなり、生活が苦しくなるおそれがあります。一方、頭金なしで住宅ローンを組めば手元に資金が残るので、住宅購入後に何らかの事情により所得が減少したとしても、一定期間の生活費を確保できます。

住宅ローン控除の恩恵が大きくなる

国税庁では、住宅ローン控除を次のように定義しています。

個人が住宅ローン等を利用してマイホームの新築、取得又は増改築等(以下「取得等」といいます。)をした場合で、一定の要件を満たすときは、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除する「住宅借入金等特別控除」又は「特定増改築等住宅借入金等特別控除」の適用を受けることができます。

この制度は住宅ローンなどの年末ローン残高の1%(上限40万円)を所得税や住民税(※1)から控除できる「税額控除(※2)」であり、頭金をなしとし住宅ローンの借入額を増やすことで控除額が大きくなります。

注意点としては、控除対象となる住宅ローンの年末ローン残高の上限は4,000万円までであること。また、そもそもの所得税や住民税の納税額が少ない場合、本来の納税額を超えた控除を受けることができないため、控除の恩恵が限定的となる場合があります。

※1:所得税から控除しきれなかった場合に住民税から控除
※2:所得控除ではないため上限40万円の税額を所得税や住民税から直接控除できる

頭金なしで住宅ローンを組むリスク

毎月の返済額が増える

頭金をなくして住宅ローンの借入額を増やせば、毎月の返済負担が重くなります。将来的に支出の増加や収入の減少が見込まれる場合、毎月の返済金額が多いと貯蓄がしにくくなります。結婚費用や子育て・教育費用、介護費用などの支出が発生するタイミングで必要な資金を確保できなくなるおそれがあるでしょう。

また、収入に対して住宅ローンの返済割合が多いと使える生活費が少なくなり、暮らしの質が下がりやすくなります。ご家庭の状況にもよりますが、住宅ローンの年間の返済額が年収の25%を上回ると、生活に支障が出やすいと言われています。

たとえば、世帯年収500万円の家庭の場合、住宅ローンの返済額は年間125万円(月額約10.4万円)以下が望ましいでしょう。なお、自動車ローンや教育ローンなど、住宅ローン以外に借り入れがある場合、すべての借り入れの返済総額が年収の25%を超えないよう注意が必要です。

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利息の負担が増える

住宅ローンの利息は借入残高に対して発生します。借入額が増えると返済期間が長期化しやすく、利息の総支払額が増える傾向があります。住宅価格に対する住宅ローンの借入額の割合のことを「融資率」といい、融資率が高くなると適用される金利が上がることもあるのです。固定金利型の住宅ローンである【フラット35】は、融資率が9割を超えると金利が高くなります。いくら総返済額に違いがでるのかシミュレーションしてみましょう。

借入期間:21年以上35年以下
借入金額:3,000万円、元利均等返済方式

融資率 最も多い金利 毎月返済額 総返済額
9割以下 1.290 8.9万円 3,730万円
9割超 1.550 9.3万円 3,889万円

※金利は、2020年6月融資実行時の最多金利

このように、融資率によって借入金利が変わる住宅ローンを利用する場合、頭金の額によって総返済額に大きな差がでてしまいます。

担保割れを起こすおそれがある

担保割れとは、借入残高よりも住宅の価値が低い状態を指します。住宅の価値は年を追うごとに下がっていきますが、借入額が多いと住宅ローンの返済スピードよりも価値の低下が早く、担保割れを引き起こすリスクが高くなります。担保割れを起こすと住宅ローンが残っている状況で住宅を売却する際に、売却金だけで借入金の完済ができません。それでも住宅を売却しなければならない場合には、不足分を自己資金でまかなう必要があります。

住宅ローン利用時に頭金の有無を決める際の注意点

頭金を支払うかどうかは、今後の家計の状況も踏まえて決定することが大切です。ここでは、頭金の有無を決める際の注意点をご紹介します。

返済困難にならないように注意する

頭金あり・なしにはそれぞれメリットとデメリットがあります。

  • 頭金あり:頭金を入れると短期的に支出が増えるが、長期的に見ると頭金なしと比較して返済負担は軽くなる
  • 頭金なし:住宅購入直後の支出増や収入減に対処しやすいものの、頭金ありと比較して毎月の返済負担は重くなる

月々の返済額や総返済額だけではなく家計の収支バランスも含めて事前にシミュレーションを行い、返済困難にならないことを前提に、頭金の有無や金額を無理のないように決めましょう。

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住宅ローン契約時の諸費用分は現金で用意する

住宅を購入する際には、物件価格のほかに登記費用などのさまざまな諸費用が必要になります。

<住宅取得に関する主な諸費用>

不動産取得税、登録免許税、印紙税、司法書士報酬、不動産仲介手数料、火災保険料、住宅ローン関係費用、引っ越し代などの経費

貯金の多くを頭金として払い出してしまうと、あとで諸費用を現金で支払えなくなるおそれがあります。金融機関によっては諸費用分も住宅ローンに組み込んで借入れることができますが、借入額が多くなり返済負担が重くなってしまいます。諸費用込みで住宅ローンを借りると担保割れや返済遅延のリスクもより高くなるため、諸費用分は現金を用意するのが望ましいです。頭金なしで住宅ローンを組む場合も同様に、借入額を抑えるために諸費用は現金で支払うと良いでしょう。

数カ月分の生活費は手元に残す

できるだけ早めに返済を終えたり、返済負担額を軽くしたりするために、頭金を多く入れようと検討されている方もいることでしょう。ただし、頭金を多く入れ「過ぎた」結果、予期せぬ出費や突然の収入減などから手持ち資金が枯渇してしまうのは避けたいところです。

とりわけ突然の収入減はコロナ禍である現在、現実問題として起きていることです。突然の解雇、雇止め、一時金(ボーナス)のカット、ベア(ベースアップ)の抑制(=ライフプランで予定していた収入の減少)はより具体的で身近な現実問題として起きていることと感じているのではないでしょうか。

そして、こういった状況はジワジワと、長く続いていくことが予想されます。住宅を購入する際に頭金を入れる場合、こういった突然の出費や収入減に備えるためにも、数カ月分の生活費は残しておきたいところです。試算の目安として一般的に再建にかかる期間といわれる36カ月分の生活費が残るような資金計画を立てておくと安心でしょう。

頭金を協力して用意する場合は名義に注意する

 住宅を購入する際の頭金を2名以上で協力して用意する場合は不動産名義(=所有権の持分割合)に注意する必要があります。

ここでは、夫婦で協力して頭金を用意するケースで解説します。

例:4,000万円の住宅の購入に対して、夫と妻それぞれの預貯金額から頭金として400万円ずつ用意し、残債の3,200万円は夫が住宅ローンを利用して調達。

上記のケースにおいては、住宅の購入のための費用をそれぞれどの程度負担したかで所有権の持分割合を決定します。具体的には、住宅購入価格4,000万円のうち、夫が3,600万円、妻が400万円の負担となるため、夫9:1の割合で所有権の持分割合を登記する必要があります。

もし負担額と異なる割合で登記した場合、夫婦といえども、贈与税の課税対象と見なされる場合があります。そのため、負担割合と所有権の持分割合は同一とすべきでしょう。

※税務に関することは、税務署の判断となりますので、税務署または税理士に必ずご相談ください。

頭金あり・なしは長期的な収支計画をもとに考えましょう

頭金を支払うべきかどうかに正解はありません。十分な頭金を用意したほうが返済は楽になりますが、貯金に時間がかかり住宅購入が遅れてしまうと、完済年齢が遅くなり老後の生活に影響が出るおそれがあります。一方頭金なしの場合は月々の返済額が増えるものの、若いうちに住宅を購入すれば将来的に収入が上がり返済が楽になるケースもあります。長期的な資金繰り表(収支計画)を作成し、返済不能にならないかを確認したうえで、頭金を入れるかどうかを決定すると良いでしょう。

監修

山田 浩(やまだ ひろし)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士・CFP認定者

青山学院大学卒業後、大手ゼネコン勤務を経てIT関連会社を設立。財務会計システムの上流工程エンジニアとして数多くのシステム構築を手掛ける。現在は、マネーコンサルティング業務にベクトルを傾け、パーソナルファイナンス研究事務所 & techの代表としてとして活動中。

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