団体信用生命保険の種類が多様化!FPが選ぶ際のポイントも解説

団信の種類にはさまざまなものがあり、基本である死亡時の保障ほか、特約として特定の疾病保障等を付加できるものもあります。

団体信用生命保険は、住宅ローン返済中の「万が一」に備える手段のひとつです。そのため、原則住宅ローン借入れの要件とされていますが、その内容は近年多様化しています。

そこで、この記事では団体信用生命保険の基本から、団体信用生命の種類や選ぶ際のポイントについて解説していきましょう。

【目次】
団体信用生命保険の基本
団体信用生命保険の種類
団体信用生命保険を選ぶ際のポイント
団体信用生命保険加入前には家計の見直しを!

団体信用生命保険の基本

まずは、団体信用生命保険とはどのようなものか、ポイントを3つに分けて解説していきます。

団体信用生命保険は、原則住宅ローンの契約者が加入できる保険

団体信用生命保険(以下、団信)は、住宅ローン返済中の万が一の残債を補償する仕組みです。そのため原則住宅ローン借入れの要件とされており、住宅ローンの契約者が加入できます。

フラット35では借入時の加入は義務づけられていませんが、通常団信の保険料を含めた金利表示がされています。

団信は住宅ローンを契約する銀行などのしますが、借入を行う金融機関によって加入できる商品が異なります。

返済途中の死亡や、身体障害状態などに備えられる

住宅ローンの返済途中で住宅ローン契約者が死亡、もしくは高度障害状態になった場合に、生命保険会社から金融機関に住宅ローンの残債が支払われます。

ちなみに、フラット35の機構団信においては、高度障害状態時ではなく、身体障害状態時に残債が支払われます。

高度障害状態とは食事や着替えといった日常生活の動作を自力で行えず、常に介護を必要とする状態を要件としているのに対し、身体障害状態時とは身体障害者手帳の1級または2級の交付を要件としています。

一般的な生命保険とは異なる点も多い

以下は、団信と一般的な生命保険の違いの例を一覧にしたものです。

団体信用生命保険 一般的な生命保険
被保険者 債務者 任意で指定
契約者 融資した金融機関 保険料負担者
保険料の支払い 保険料負担は実質債務者 個別で支払い
保険金の受取人 融資した金融機関 任意で指定した受取人
保障額 住宅ローンの債務残高 任意で設定
保険期間 住宅ローンの返済期間 任意で設定
保険料の算定方法 借入額と借入期間に基づく 年齢や性別などに基づく
告知 原則必要 原則必要
中途解約 一般的に不可能 可能
生命保険料控除の適用 なし あり

一般的な生命保険同様、団信は万が一の際、必要な保障額を用意するための手段のひとつですが、一般的な生命保険とは異なる点も多くあります。

たとえば、一般的な生命保険契約においては契約者や被保険者、保険金の受取人は任意で設定することができますが、団信においては、債務者が被保険者となり、契約者と保険金の受取人は金融機関になります。

また、一般的な生命保険契約においては、保障額や保険期間の設定が任意ですが、団信は前述のとおり、住宅ローン返済中に、万が一のことが起こった際、残債を補償するのが目的の保険です。

そのため、住宅ローンの残高を上回る保障は用意できず、保障額や保険期間が特徴的なポイントは保険料です。

一般的な生命保険契約においては、年齢や性別に基づいて保険料が決まるため、年を重ねるほどに保険料は上がる傾向にあります。

一方、団信では基本的に借入額と借入期間に基づいて保険料が決められます。かつ保険料の割引が受けられる、年を重ねてからの契約であったとしても、借入額を抑えることができれば、一般的な生命保険で用意するよりも保険料負担を減らすことが可能です。

ただし、加入にあたっては原則どちらも告知が必要であり、健康状態によっては加入できない場合や保険料が割高になる場合もあります。

中途解約については、一部の団信では可能ですが、不可であるものも多いです。商品によって異なりますので、あらかじめ確認しておきましょう。

団体信用生命保険の種類

団信の基本となる保障は前述の通りですが、中には別途特約を付帯することで、一定の残債の返済保障を用意できるものもあります。ここでは、近年注目されている3つの保障をご紹介します。

ガン保障

ガンに限定した保障です。一般的に保障開始日から90日経過後に悪性のガンとはじめて診断された場合に残債がゼロになりますが、上皮内ガンは対象外です。

ガンに保障を絞っているため、ほかの疾病保障とくらべると保険料も安く、追加料金なしで付帯できる場合もあります。中には、住宅ローン残高が半分になる「50%保障」の商品もあります。

各種疾病保障

ガンに加えて、急性心筋梗塞・脳卒中が原因で所定の要件に該当した場合に保険金が支払われ、以後の返済が不要になる3大疾病保障が代表的です。

急性心筋梗塞と脳卒中で保険金が支払われる所定の要件は各商品で異なります。ガン保障とは異なり、診断されるだけでは保障が受けられません。一般的には、60日以上病状が継続する場合や所定の手術を要件とするものが多いです。

そのほか、3大疾病よりも保障範囲を拡大した「7大(8大)疾病保障」や、すべての疾病を対象とする「全疾病保障」もあります。

7大疾病保障など、拡大した疾病保障をカバーした団信では、要件をみたした時点で残高がゼロになるタイプのほか、一定期間返済免除ののち残高がゼロになるタイプもあります。

ちなみに、フラット35の新機構団信でも3大疾病保障を用意することができます。新3大疾病付機構団信であれば、3大疾病時だけではなく、返済中の要介護時にも備えることが可能です。

自然災害時一部免除

自然災害時に住宅が被災した場合に、一定の残債の支払いが免除されます。保障内容は各商品により異なりますが、定期間返済が免除されるタイプと、残債の半分が免除されるタイプに大きく分けることができます。

一定期間返済が免除されるタイプでは、自然災害による自宅の罹災の程度に応じて、最大24ヶ月の住宅ローン返済額を債務者にことで、実質的にその間は、返済負担がなくなります。残債の半分が免除されるタイプでは地震・噴火・津波を対象とし、全壊と認定された場合のみ保障されます。

団体信用生命保険を選ぶ際のポイント

ここでは、団体生命保険を選ぶ際のポイントを見て行きましょう。

まずは、本当に必要な保障と借入額を明確化

団信では、保障が手厚くなるほどに保険料負担が増す傾向にあります。中には手厚い保障が無料で用意できる住宅ローンもありますが、住宅ローン審査は厳しい、といった場合も多いです。

また、団信では借入額を増やせば保険料負担も増すため、借入額をむやみに増やさないことが大切です。まずはしっかりと情報を集め、本当に必要な保障と借入額を明らかにして内容を検討しましょう。

保険料の支払い方法を確認

団信の保険料の支払い方法はひとつではありません。主に3つの方法があります。

  1. 金利に団信保険料が含まれ、支払い不要のもの
  2. 金利に上乗せして支払う方法
  3. 住宅ローン返済とは別に支払う方法

保険料が金利に含まれるものや、金利に上乗せして支払う団信では途中解約ができません。

住宅ローンの残債が多いうちはしっかりとした保障が必要ですが、返済とともに残債が減れば、保障が不要になる場合もあります。住宅ローン返済とは別に支払う団信であれば、途中で解約することも可能です。

また、疾病保障付き団信には、保険料が返済期間中固定されるものや、定期的に見直されるものもあります。住宅ローン返済の出口までの負担を見通して、支払い方法もまた確認しましょう。

追加保障に入る場合は、支払い要件の違いを確認

同じ疾病の保障でも、保険金が支払われるは商品ごとに異なります。特にガンを除く疾病保障は、保障範囲を広げるほどに要件も厳しくなる傾向にあります。

また、自然災害被災時に残債を一部免除するという保障も、支払い要件は商品ごとに異なり半壊以上で保障されるものもあれば、大規模半壊以上もしくは全壊時のみ保障されるものもあります。

そして、地震・噴火・津波・水災・風災・ひょう災・雪災・落雷・火災・爆発・車両の衝突など、災害にはさまざまな種類がありますが、対象とする災害は商品により異なります。

追加の保障を付帯する場合には、支払い要件の違いを理解できるように心がけましょう。

団体信用生命保険加入前には家計の見直しを!

住宅ローン返済中の万が一を考えると、不安になるのも自然なことです。とはいえ、不安だからと保険料を支払いすぎては、かえって家計を圧迫するリスクもはらみます。

団信を比較検討する際には、合わせて家計の見直しも行いましょう。見直すことで、団信の保障を増やさなくとも、ご自身で今からできる対策が見つかり、すでに加入している保険の見直しもできるかもしれません。

マイホームは安定した暮らしの土台となります。まずは適切な住宅ローンを選び、団体信用生命保険の種類を検討しましょう。

監修

内田 英子(うちだ えいこ)

(保有資格)
CFP・FP1級・消費生活アドバイザー

生活設計塾FPオフィス幸せ家族ラボ代表。証券会社、保険ショップ勤務を経て、生活設計塾FPオフィス幸せ家族ラボを設立。かつての専業主婦経験も活かしながら、子育て世帯を中心に家計の総合医として暮らしの健康を維持する総合的なアドバイスを金融機関から完全に独立した立場で行っている。

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