長期にわたって返済を続けていく住宅ローンにおいて、生活環境の変化など様々な要因によって返済途中で条件を見直す必要があります。低金利が続いてきた近年においては、より条件の良いローンへと変更する「借り換え」を行う方もいます。借り換えを行うには、適切なタイミングを見極めることが大切です。
本記事では、借り換えの概要を説明し、その判断ポイントと注意点について解説していきます。金利の動向、収入の変化、新たな金融機関の選択肢など、住宅ローンの借り換えを検討している方はぜひ参考にしてください。
【目次】
住宅ローンの借り換えとは?
住宅ローンを借り換えるタイミングはいつがよいの?
借り換えの際に気をつけておきたいこと
こまめに返済負担を見直し、住宅ローンの借り換えでライフプランを再設計しよう!
住宅ローンの借り換えとは?
住宅ローンの借り換えとは、新たな金融機関と新しい条件で住宅ローンの契約を結び、既に借りている住宅ローンを一括で返済する手続きのことを指します。住宅ローンの借り換えを検討する基準としては、一般的には以下の3点が挙げられます。
・借り換え前と後の金利差が1%以上
・借入残高が1,000万円以上
・借入期間の残りが10年以上
上記はあくまでも目安であり、条件をすべて満たしていなくても借り換えが有利になるケースもあります。毎月の返済額を減らしたい方や総支払額を抑えたい方は、借り換えを検討してみましょう。
住宅ローンの借り換えによって、総支払額や月々の返済負担を減らせる場合もありますが、一方で手続きや手数料など各種費用の負担が伴います。そのため、デメリットも考慮したうえで、計画的に進めることが大切です。
住宅ローンを借り換えるタイミングはいつがよいの?
では、住宅ローンの借り換えを進めるべきタイミングについて解説します。
固定金利期間が終わる
住宅ローンの借り換えを検討すべきタイミングの一つに、住宅ローン契約の固定金利期間が終了するときがあります。
通常、固定期間終了時に特に手続きをしなければ、変動金利が適用されます。注意が必要なのが、金利引き下げには「当初期間引き下げ型」と「全期間引き下げ型」がある点です。
当初期間引き下げ型の場合、固定金利期間終了後に変動金利を選んでも固定金利を選んでも適用金利は大幅に上がる可能性が高くなります。固定期間終了後の適用金利を確認して返済額が大幅に増える場合、借り換えたほうが有利かもしれません。
ただし、借り換えにはさまざまなコストがかかります。それらを加味してもなお借り換えが有利かどうかを慎重に検討する必要があります。
変動金利の金利が変わる
住宅ローンの変動金利は、通常は半年ごとに金利が見直されます。 変動金利は固定金利よりも金利が低い反面、金利上昇のリスクにさらされています。
適用される変動金利が上がった場合、ローンの残りの期間が長い方や借入金額が多い方は固定金利への借り換えを検討してみましょう。
変動金利からフラット35などの固定金利に借り換えると、返済額は増えます。しかし、ずっと同じ金額で返済できるため、家計の見通しは立てやすくなります。
転職などで収入が減る
転職や勤務先での配置転換などで収入の減少が見込まれる場合、住宅ローンを借り換えて毎月の返済額を減らせるかを検討してみましょう。
たとえば、より低金利の住宅ローンに借り換えできれば、毎月の返済額を減らせるかもしれません。
一般的に住宅ローンでは勤続年数を審査項目とする金融期間は多いため、転職直後の借り換えは避けたほうが無難です。収入減少がわかった時点でなるべく早く借り換えを検討しましょう。
金利水準が借りたときより下がっている
現状の返済プランで十分に余裕があるとしても、なるべく返済金額を少なくできるに越したことはありません。そのため、借入したときの金利と現在の金利水準を定期的に確認しておくことが大切です。
借りた当初の金利と比較して現在の金利水準が低い場合、住宅ローンの借り換えを行うことで返済総額を減らせる可能性があります。目安として1.0%以上の金利差がある場合は、借り換えを検討してみましょう。
よい条件の金融機関を見つけた
現在の住宅ローンよりも、有利な条件となる商品のある金融機関を見つけた場合、借り換えが有利となる可能性があります。
借り換えシミュレーションで借り換え前後の総返済額などをチェックし、諸手数料などのコストをかけても借り換えが有利と判断できれば、実行に移してもよいでしょう。
また、タイミングによっては金融機関が実施しているキャンペーンなどでより有利な住宅ローンを組める可能性もあります。詳細まで確認し、比較してみましょう。
借り換えの際に気をつけておきたいこと
住宅ローンを借り換える際に注意すべき点がいくつかあります。
まず、借り換えを検討しても、実際に実現できない場合もある点です。
健康状態に問題があった場合や収入が減少した場合、信用情報に傷がある場合などは、住宅ローンの審査に落ちる可能性があります。
新規の申し込みと同様に、借り換えの場合も返済負担率などが考慮されるため、残債の金額や借入期間を確認した上で申し込むとよいでしょう。
次に、住宅ローン控除を適用できる条件の一つである「残りの返済期間10年以上」を満たしているかどうかにも注意が必要です。もし返済期間の残りが10年未満の場合は住宅ローン控除を受けられません。
また、ローン残高が1,000万円未満の場合、借り換えを行うメリットが感じにくいということもいわれています。借り換えを検討する際はシミュレーションを行い、軽減できる金額を正確に試算しましょう。
住宅ローンの借り換えは別の住宅ローンを契約することになるため、現在の契約で適用されている特典や保険なども見直す必要があることを把握しておきましょう。
こまめに返済負担を見直し、住宅ローンの借り換えでライフプランを再設計しよう!
住宅ローンの借り換えは、月々の返済負担を軽減し、ライフプランを見直すための貴重な機会です。ただし、収入の状況、返済の残金額、残年数などの状況によっては借り換えができない、もしくは借り換えするメリットがないことも考えられます。
借り換えの検討を進める際には、適切なタイミングを見極めて金利差や諸条件を比較し、シミュレーションを行いましょう。もし不安であれば、ファイナンシャルプランナーなど、プロのアドバイスも活用しながら進めるのが賢明です。
松田 聡子(まつだ さとこ)/ファイナンシャルプランナー
群馬FP事務所代表。日本FP協会認定CFP®・DCアドバイザー・証券外務員2種。ITエンジニア、国内生命保険会社を経て2009年に独立系FPとして開業。
「住宅ローンを無事に返済しきるには健全な計画が肝心」をモットーに住宅ローン相談にも対応中。