フラット35を連帯債務で契約するメリット・デメリットとは?

申込者単独では希望額の借り入れが難しい場合でも、夫婦や親子で連帯債務の形を取り収入を合算して申し込めば、希望額の融資を受けられるケースがあります。夫婦が共働きで家計を支えている家庭も多い現代において、夫婦で協力して住宅を購入するのは合理的な判断と言えます。今回はフラット35を連帯債務で契約する場合のメリットやデメリット、注意点について解説します。

【目次】
フラット35は連帯債務(収入合算)で契約できる?
連帯債務でフラット35を利用するメリット・デメリット
連帯債務でフラット35を利用するときの注意点
連帯債務を利用するときはメリット・デメリットを理解して慎重に判断を

フラット35は連帯債務(収入合算)で契約できる?

フラット35では、一定の条件を満たせば連帯債務(収入合算)により契約が可能です。

フラット351名まで収入合算できる

フラット35において連帯債務(収入合算)で契約を申し込むことができるのは、次のすべての要件を満たす人が連帯債務者となる場合です。

・申込者本人の親、子、配偶者など(直系親族または配偶者、婚約者や内縁関係でも可)

・申込時の年齢が70歳未満

・申込者本人と同居している(※13

1:親族が住むための住宅であれば、借入対象となる住宅に入居する人も収入合算の対象になります。
2:セカンドハウスや親族が住むための住宅の場合、申込者本人と合算者の同居が不要になる場合もあります。
3:申込者本人が住むための住宅で親子リレー返済を行う場合、後継者の同居は不要です。ただし、金融機関により取り扱いが異なることがあります。

連帯債務と連帯保証の違いとは

収入合算により住宅ローンを組む方法には、連帯債務のほか連帯保証もあります。ただしフラット35では連帯債務のみ選択できます。それに対して、民間金融機関が取り扱う住宅ローンでは連帯保証が一般的であり、連帯債務による収入合算を取り扱う金融機関は限られています。この連帯債務と連帯保証にはどのような違いがあるのでしょうか。

連帯債務は、主たる債務者と連帯債務者が協力して返済を行う形式であり、連帯債務者は主たる債務者(申込者)と同等の返済義務を負います。そのため金融機関は、いつでも、どちらに対しても返済を請求できます。

連帯保証は、債務者(申込者)の返済を連帯保証人が保証する形式であり、債務者が返済できなくなった場合にはじめて連帯保証人の返済義務が生じます。そのため金融機関は債務者が返済不能にならない限り、連帯保証人に返済を請求できません。

夫婦や親子が協力して住宅ローンを組む方法には、連帯債務や連帯保証のほかにペアローンもあります。ペアローンとは1つの物件に対して、夫婦や親子が同一の金融機関でそれぞれ住宅ローンを契約することです。収入合算(連帯債務・連帯保証)を利用すると契約は1本ですが、ペアローンでは2本になります。ペアローンはそれぞれ独立した契約であるため、各自が住宅ローン控除や団体信用生命保険(以下、団信)に加入でき、借入期間や金利タイプなどの契約条件を比較的自由に設定できるメリットがあります。一方で契約にかかる諸費用が割高になるデメリットがあります。

連帯債務でフラット35を利用するメリット・デメリット

連帯債務でフラット35を利用すれば、借入可能額を増やせるほかに、次のようなメリット・デメリットがあります。

メリット

連帯債務者も住宅ローン控除を利用できる

住宅ローン控除とは、最長10年間(消費税10%で購入した住宅の場合、最長13年間)にわたり、住宅ローンの年末残高の1%相当額を所得税と住民税の一部から控除できる制度のことです。

住宅ローン控除は控除対象者の課税額(所得税額と住民税額の一部)が限度となるため、もともと課税額が少ない人は住宅ローン控除を最大限活用しきれないこともあります。連帯債務で住宅ローンを組むと、主たる債務者と連帯債務者がともに住宅ローン控除を利用でき、それぞれの課税額を限度に控除を受けられるため、より多くの控除を受けられる可能性があります。

住宅ローン控除の対象額は基本的にローンの負担割合に応じて決まり、所有権登記上の持分割合と実際のローンの負担割合が違う場合には控除対象額が変わります。返済額の設定や登記をする際、持分に対して本来負担すべき金額と実際の負担額に差があれば、贈与とみなされることもあるため注意が必要です(詳細は後述)。

デュエット(夫婦連生団体信用生命保険)に申し込める

配偶者を連帯債務者として夫婦でフラット35を利用する場合には、デュエット(夫婦連生団信)に申し込めます。デュエットに加入すると、主たる債務者と連帯債務者のどちらかが死亡、もしくは所定の身体障害状態になった場合に、夫婦の持分やローンの負担割合にかかわらず、住宅ローン残高の全額が一括弁済されます。それ以降はローン返済がなくなるため、残された家族は生活を立て直しやすくなるメリットがあります。

連帯債務でフラット35を利用する場合にも、通常の新機構団体信用生命保険(新機構団信)を選択することができますが、新機構団信では主たる債務者のみが保障の対象となります。そのため連帯債務者が死亡したり、所定の身体障害状態になったりしてもローンの返済は免除されません。

デメリット

離婚したとしても連帯債務の解除は難しい

夫婦が主たる債務者と連帯債務者になっている連帯債務契約は、離婚したとしても無効にはなりません。また連帯債務は夫婦2人の返済能力を前提に融資しているため、通常は単独名義への変更を借入先の金融機関に承諾してもらえません。金融機関の承諾を得られなければ、連帯債務を解消するには住宅ローンを一括返済するしかなくなります。手持ち資金での一括返済が難しければ、別の金融機関で単独名義の住宅ローンに借り換える、あるいは家を売却して精算するといった対応が必要になります。とはいえ単独名義への借り換えは借入額に見合った収入がなければ難しく、家を売却するにしても、売却代金で残った住宅ローンを完済できるとは限りません。

離婚の場合、住宅の所有権やローンの名義変更を行わず、これまで通りに返済を続け、夫婦のどちらか一方が現在の住宅に住み続けるケースもあります。このケースでは、生活環境や子どもの学校を変えずに済むメリットがある一方、家から出るほうは自身の家賃や生活費にローンの返済が加わり、場合によって養育費も支払うことになるため、負担が重くなります。

デュエットを利用すると通常の新機構団信よりも金利が高くなる

デュエットは通常の新機構団信と比べて、金利が年0.18%高くなります。

借入期間30年、借入額3,000万円、元利均等返済・ボーナス返済なしという条件であれば、デュエット(金利年1.48%)に加入する場合は、通常の団信(金利年1.30%)に加入するよりも総返済額が約123万円、月々の返済額は約3,000円多くなります。

加入する団信の種類(金利) 総返済額 月々の返済額
新機構団信(年1.30% 4,833万円 13.5万円
デュエット(年1.48% 4,956万円 13.8万円

※住宅金融支援機構・ローンシミュレーションにより筆者試算。
※執筆時点(20205月)の金利水準での試算であり、借入時期によって金利は変動します。

万一に備えるには、団信だけでなく民間の生命保険に加入する方法もあります。現在加入している保険の負担額や保障範囲の違いなどを比較したうえで、団信で備えたほうが良いのか判断することをおすすめします。

連帯債務でフラット35を利用するときの注意点

連帯債務でフラット35を利用するときには、次のような点に注意が必要です。

完済まで2人ともが返済の義務を負う

連帯債務契約では、主たる債務者と連帯債務者の両者がローンの完済まで返済義務を負うことになります。返済が長期にわたり続く住宅ローンでは、返済期間中に夫婦のどちらかが病気や出産・育児、親の介護などのため休職や退職をするかもしれません。連帯債務を利用するときは、将来のライフプランやそれぞれのキャリアプランなどを考慮した上で、返済計画に無理がないか慎重に判断する必要があります。

住宅の持分と返済の割合が異なると贈与税が発生するおそれがある

住宅の持分割合と住宅ローンの負担割合が異なっている場合、一方が他方の返済を肩代わりしている(贈与があった)とみなされ、贈与税が発生するおそれがあります。

たとえば住宅を7(主たる債務者)対3(連帯債務者)の割合で所有(登記)しているケースで、実際には主たる債務者が返済額の8割を負担しているとすると、連帯債務者が本来負担すべき1割分が、主たる債務者から連帯債務者への贈与と見なされるおそれがあります(頭金や諸費用の負担を考慮していない場合)。贈与税を課税されないためにも、特段の事情がなければ住宅の持分と返済額の割合は揃えるようにしましょう。

収入合算者の合算額によっては借入期間の上限が短くなる

フラット35では収入合算者(連帯債務者)の年収の全額を合算できます。ただし、収入合算者の年収の50%を超える収入を合算してフラット35に申し込む場合には、設定できる借入期間の上限が短くなることがあります。

【収入合算者の年収の50%を超える収入を合算して申し込む場合の借入期間の上限】

80歳-〈申込者本人または収入合算者のうち年齢が高いほうの申込時の歳(1歳未満切上げ)〉

たとえば申込者本人が303カ月、収入合算者が556カ月(年収600万円)の場合、合算額が600万円(収入合算者の年収の50%超)であれば、80歳から収入合算者の年齢(1歳未満を切上げた56歳)を差し引いた、24年が借入期間の上限になります。

連帯債務を利用するときはメリット・デメリットを理解して慎重に判断を

連帯債務には借入額を増やせることや夫婦や親子2人で住宅ローン控除や団信を利用できることといったメリットがあります。一方で長期間にわたって2人で返済をしていかなければならないため、どちらかに収入の変化があった場合や離婚など想定外の事態が起こったときには、返済ができなくなったり、トラブルの原因になったりするおそれもあります。連帯債務を利用するかはメリット・デメリットを理解したうえで、ほかの方法とも比較検討を行い、慎重に判断しましょう。

監修

竹国 弘城(たけくに ひろき)/1級FP技能士、 CFP認定者

証券会社、生損保総合代理店での勤務を経てファイナンシャルプランナー(FP)として独立。相談者の利益を第一に考え、自分のお金の問題に自分自身で対処できるようになるためのコンサルティングや執筆活動などを行う。

 

関連キーワード
  • 2024年の住宅ローンはどうなる?住宅の買い時はいつ?
  • 住宅ローンの変動金利が上がる?住宅ローン検討で押さえるポイントとは【2024年】
  • 【フラット35】子育てプラスが2月より開始!制度の概要と利用のポイントを紹介
  • 【2024年】住宅ローンと併せて利用したい補助金まとめ
  • 【2023年度】変動金利と固定金利の違いとは?金利タイプの選び方と今後の動向
  • 住宅ローンがあるけど引っ越したい場合どうすればよい?
  • ボーナス払いで住宅ローンを繰り上げ返済してもよいの?仕組みやメリットを解説
  • 住宅取得資金贈与の非課税は、タイミングを逃さないよう注意!
おすすめの記事