住宅ローンを選ぶ際に、最も気になるのは「金利」ではないでしょうか。毎月1日に金利が発表されますが、実は事前にある程度の予測を立てることができます。
今後の金利予測を立てることができれば、フラット35か一般の住宅ローン、どちらがよいか判断しやすくなるでしょう。
そこで今回は、フラット35の2022年11月の金利予想を行います。フラット35の金利が決まる仕組みもあわせて解説しますので、これから住宅購入を検討している人はぜひ参考にしてみてください。
【目次】
【2021年1月〜2022年10月まで】1年間のフラット35の金利推移
2022年11月のフラット35金利はどうなる?
まとめ
【2021年1月〜2022年10月まで】1年間のフラット35の金利推移
2022年10月の金利は、借入期間21~35年・20年以下どちらも前月より下がりました。しかし、フラット35の金利は2022年に入ってから上昇傾向にあります。
特に高水準だった2022年8月(借入期間21年~35年)の金利は1.530%。2021年8月の1.28%より1.19倍も上昇しています。
フラット35の金利が決まる仕組み
フラット35の金利は、投資家に販売する機構債の表面利率をベースに決まります。
民間金融機関が実行した住宅ローンの債権を住宅金融支援機構が買い取り、その債権を担保として証券を発行し機関投資家に「機構債(RMBS)」という形で販売するという仕組みです。
この機構債の表面利率をベースに、住宅金融支援機構と民間金融機関の利益分の金利を上乗せしてフラット35の金利が決まります。
そのため、機構債の表面利率が上昇すればフラット35の金利も上がり、反対に、機構債の表面利率が下降するとフラット35の金利は下がります。
また、機構債の表面利率は、長期金利(10年国債利回り)をベースに毎月の金利が決まります。よって、フラット35の金利は長期金利の動向に大きく左右されるのです。
2022年11月のフラット35金利はどうなる?
フラット35の金利は、長期金利と機構債の表面利率がベースとなって決まります。そのため、これまでの推移を確認すれば金利の予想がある程度立てられるのです。
ここでは、長期金利と機構債の表面利率の推移を見ながら、2022年11月のフラット35の金利予想をしていきます。
長期金利(10年国債利回り)の推移
フラット35の金利を決める際のベースとなる機構債の表面利率は、長期金利(10年国債利回り)の動向に影響を受けています。
上記グラフの通り、長期金利(10年国債利回り)は2022年に入ってから急上昇し、これまでより高い水準で推移しています。2022年8月3日時点では0.18%でしたが、10月13日には0.24%にまで数値が上昇しました。
アメリでは、インフレの沈静化に向けて大幅な利上げに踏み切っている状況です。米国連邦準備制度理事会は9月21日、6月、7月に続き3回連続で政策金利を0.75%引き上げることに決めました。アメリカの住宅ローン30年固定金利は、14年ぶりに6%を超えています。
日本の長期金利(10年国債利回り)も金融大国アメリカの金利上昇の影響を受けるため、金利は上昇傾向にあります。
現在は、日本銀行がコントロールする上限値の0.25%付近で推移している状況です。
機構債(RMBS)表面利率の推移
機構債(RMBS)表面利率は既発債情報の表面利率から確認できます。
機構債の表面利率で確認すべきポイントは、前月と今月の金利の差です。この差が翌月の金利に反映される可能性が非常に高いためです。
例えば、2022年4月の表面利率が0.46%、5月が0.50%なので、前月比+0.04%となりました。これに連動し、4月のフラット35の金利1.44%に+0.04%した1.48%が5月の金利となりました。
10月末に発表された機構債の利率は「0.74%」。先月と比較して+0.16%となっています。これは、過去に例を見ないほどの大幅増です。
ただし、10月は機構債の表面利率が0.08%上昇したにもかかわらず、フラット35の金利は0.04下がる結果となりました。よって、必ずしも機構債と金利の上昇率が一致するとは限りません。
参考:既発債情報:住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫) (jhf.go.jp)
2022年11月のフラット35の金利は上昇か
機構債(RMBS)表面利率およびこれまでの推移等を踏まえると、2022年11月のフラット35の金利は上昇するものと考えられます。
推移 | 9月 | 10月 | 11月 |
10年国債利回り | 0.20% | 0.25% | →0.25%(±0) |
機構債の表面利率 | 0.50% | 0.58% | ↑0.74%(+0.16) |
フラット35の金利 | 1.52% | 1.48% | ↑1.64%(予想) |
先月は機構債の利率が上がったにも関わらず、フラット35の金利は低下しました。これは、住宅支援機構の利益率が下がっていることを意味します。10月の機構債の表面利率は0.58%で、11月が0.74%なので、その差は0.16%。今回、さらに上昇した機構債に金利を連動させるため、11月のフラット35の金利は「1.48%」から「1.64%(+0.16%)」に引き上げられると予測します。
まとめ
長期金利(10年国債利回り)や機構債の表面利率を考慮すると、フラット35の金利は今後上がることが考えられます。しかし、それでもこれまでの金利と比較すると低金利であることに変わりはありません。
住宅購入や住宅ローンの借り換えを検討している方は、金利の動向に注意を払いつつ、低金利状態が続いているうちに行動に起こすことをおすすめします。
亀梨 奈美(かめなし なみ)/住宅ローンアドバイザー
大手不動産会社退職後、フリーライターとして独立。2020年株式会社realwaveを設立し代表取締役に就任。
「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに、メガバンクや不動産会社のメディア、不動産専門紙などで多くの記事を執筆・監修。