住宅ローンは何歳までに申し込むべき?借りる前にチェックすべきポイントも解説

住宅ローンを組む際には、ご自身の年齢も考慮する必要があります。30年返済、35年返済など返済期間をどのくらいにするのかを決める際には、ローン返済による支出に対して、何歳までなら家計が耐えられるかを慎重に検討することが欠かせません。

60代や70代になり定期収入が年金のみになると、現役世代と同様の返済額を毎月支出するのは難しいため、本来はそれ以前に完済することが望ましいです。また、金融機関の住宅ローン審査でも年齢による制限が設けられています。この記事では、金融機関が設けている年齢制限も含め解説していきます。

【目次】
住宅ローンに年齢制限はある?
住宅ローンの借入時の平均年齢と借入期間
年齢を考慮した住宅ローンの申し込み時期
住宅ローンを借りる前にチェックすべきポイント
年齢要件ギリギリではなく、余裕を持った返済計画を

住宅ローンに年齢制限はある?

原則的に、住宅ローンの借入には年齢制限があります。

通常、住宅ローンの年齢制限とは、住宅ローンを申し込める年齢の上限を指します。これは金融機関によって異なりますが、たとえば、代表的な長期固定金利型の住宅ローンである【フラット35】は満70歳未満です。

ただし、お子さまなどを後継者として2世代で返済する「親子リレー返済」を利用する場合は、満70歳以上でも申し込むことができます。後継者の年齢をもとに借入期間を算出するため、借入期間を長くすることができるのです。

また一般的には、住宅ローンを借りると団信(団体信用生命保険)に加入することになります。住宅ローンの返済期間と同じ期間で加入しますが、ほとんどの団信は20歳以上を対象としているため、未成年の方が住宅ローンを組む場合には、選ぶ団信の種類が変わることがあります。中には、20歳未満の未成年者は対象外としている金融機関もあるため、注意が必要です。

なお、【フラット35】の融資を受ける際に加入することができる機構団信(機構団体信用生命保険特約制度)であれば、満15歳以上から対象となるため、20歳未満でも加入できます。住宅ローンの年齢要件は、借入れを検討している金融機関のHPなどで確認すると良いでしょう。

住宅ローンの借入時の平均年齢と借入期間

次に、住宅ローンの借入時の平均年齢と借入期間について、実際のデータをご紹介します。

借入時の年齢は平均40.2歳

住宅金融支援機構の「2019年度 フラット35利用者調査」によると、【フラット35】の申込者の平均年齢は40.2歳となっています。10年前の2009年度は平均39.3歳だったため、借入時の平均年齢は緩やかに上昇していることがわかります。

特に、【フラット35】の中心的な利用年齢層である30代の割合は、かつては全体の50%以上を占めていましたが、2019年度は41.7%と少しずつ減少し、逆に40代の割合(2019年度は25.9%)が緩やかに上昇しています。

※参考:「2019年度 フラット35利用者調査」(住宅金融支援機構)

借入期間は平均32.9年

同じく、住宅金融支援機構の「2019年度 フラット利用者調査」によると、償還期間(借入期間)の平均は32.9年です。借入時の平均年齢は約40歳でしたから、以降約33年間にわたり返済すると、完済時の年齢は約73歳になります。つまり、多くの人が定年後も住宅ローンの返済を続けていることがわかります。

※参考:「2019年度 フラット35利用者調査 2019年度集計表」(住宅金融支援機構)

年齢を考慮した住宅ローンの申し込み時期

住宅ローンの申し込み時期は、年齢も考慮して決めることが大切です。ここでは理想のローンの組み方について見ていきましょう。

35年ローンが組める年齢は何歳まで?

住宅ローンを借り入れるすべての人が、必ずしも35年ローンを組むことができるわけではありません。多くの金融機関では、完済時の年齢を80歳までとしています。すなわち、「80歳-35年」で45歳までなら35年ローンを組める可能性があるということになります。

45歳を超えると、借入期間の上限は年を追うごとに短くなります。50歳で申し込む場合、最長の借入期間は30年となるでしょう。また、金融機関によっては完済時の年齢を80歳よりも下で設定しているところもあります。

35年ローンを組めるからといって、返済期間をできるだけ長く設定するのは要注意です。たとえば、45歳の人が35年ローンを組んだのち、65歳で定年退職する場合を考えてみましょう。給与収入がなくなっても、当然、支払いは続きます。

80歳の完済までの15年間は、年金や貯蓄の取り崩しから返済を行うことになってしまいます。年金収入や貯蓄額に対して月々の返済額が多いと、老後資金が不足するおそれがあります。高齢になったときの支払額の負担も考えて、完済年齢を決めましょう。

35年ローンを組みたい場合の理想的な年齢は?

老後の生活を考慮すると、定年までに住宅ローンを完済している状態が望ましいです。繰り上げ返済を行わない場合でも、30歳までに借入れば65歳までに完済できるでしょう。ただ、実際には20代で住宅を購入する方はそれほど多くありません。

※住宅金融支援機構の「2019年度 フラット35利用者調査」によると、【フラット35】の30歳未満の申込者は全体の14.2%。

繰り上げ返済を行って返済期間を短くすれば、借入時の年齢が上がっても65歳までに完済することが可能です。退職金が出る場合は、退職金で残債の一括返済を行うという手もあるでしょう。

しかし、お子さまの教育費などを支払いながら、繰り上げ返済の資金まで捻出するのは難しいというご家庭も多いです。60歳を超えると年収が下がるケースもあるため、思い描いていたような資金計画が実現できないかもしれません。あるいは、健康状態の悪化により収入が減ったり、医療費などの支出が増えたりするケースもあるため注意が必要です。

完済年齢は引き上げられている

日本経済新聞社の調べによると、2020年にフラット35を利用した人が完済する平均年齢は73歳で、20年前とくらべると5歳上昇という結果になりました。住宅ローンの完済時の平均年齢が延びている要因としては、日本人の晩婚化・住宅ローン借入額の増加傾向・借入額の増加傾向に伴う返済の長期化などが挙げられます。

フラット35の最長借入期間は35年、または借入申込時の年齢から80歳になるまでの期間です。これは、住宅ローンの中でも借入期間が長い部類に入ります。そして、そのほかの金融機関も、完済年齢の上昇傾向に併せて最長借入期間を引き上げている傾向があります。

ただし、定年退職後安定した収入がなくなる場合、収入の大半は公的年金になります。定年退職以降も住宅ローンの返済期間が残る場合は、より慎重な検討を心がけましょう。

借入開始年齢別の住宅ローン対策

住宅ローンの借入年齢は人それぞれで、年収や家族構成なども変わってきます。これから住宅ローンの検討をしている場合、どのように住宅ローンと向き合っていけば良いか、各年代別にご紹介していきましょう。

30代での借入れ

30代で住宅ローンの借入れをした場合、多くの金融機関で最長借入期間となっている35年ローンを利用しても、定年退職前に返済できる可能性が高いです。定年退職までの期間も長いので、余裕がある時期に前倒しで返済を行うことができ、定年退職後に、住宅ローンの残債を出さない対策を立てやすいでしょう。

40代・50代で借入れ

住宅ローンの利用は可能ですが、住宅ローンの返済が定年退職後も残る可能性が高いです。退職金で返済することも可能ですが、大きく退職金を取り崩してしまうと、安心して老後を過ごせなくなるおそれもあります。退職金をどの程度住宅ローン返済に充てるか、老後の公的年金額と想定し、生活費を踏まえたセカンドライフのライフプランを立てる必要があるでしょう。

60代で借入れ

年齢条件を考えると、借入れをすることは不可能ではありません。しかし、借入期間が短く返済額が大きくなるおそれがあります。公的年金額と、そのほかの収入を踏まえて返済できるかどうか慎重に検討をする必要があるでしょう。

高齢になってからの住宅購入は避けるべき?

晩年に住宅を購入する場合、収入が減少する定年以降も返済を続けることになります。早期に完済する意識を持つことを心がけ、ぜひ計画的に繰り上げ返済を行ってください。

老後の生活費が不足しそうな場合、リースバックやリバースモーゲージなどの手段を活用することで、資金を調達しながら自宅に住み続けられる手段もあります。リースバックやリバースモーゲージによって自宅を手放せば、老後資金を捻出できるとともに、相続の問題を解消できるというメリットも。相続人の方がいる場合には、事前にきちんと話し合いをしておくと良いでしょう。

また、売却のタイミングを前もって決めておき、時期が来たら手放して介護施設に移るという選択肢もあるでしょう。とはいえ、物件の評価額や手放すときの住宅ローン残債などにより、取れる手段は異なります。

いずれにしても、高齢になってから住宅を購入する場合は、収入が減っていくこと、ご自身や配偶者の健康状態、家族の意向などを踏まえて住まい選びをすることが大切です。

連帯保証人が必要になることもある

住宅ローンを利用する際には、申込者に完済が見込める安定した収入があり、住宅が担保価値として十分なものであれば連帯保証人を立てる必要はありません。しかし、以下のような場合は連帯保証人が必要になります。

  • 収入合算をする場合
  • ペアローンを組む場合

それぞれのケースについて解説していきましょう。

夫婦で住宅ローンの申し込みをしたものの、夫婦いずれかの収入だけでは希望する金額まで住宅ローンの借入れができない場合、夫婦の収入を合算して世帯収入を増やすと借入額を増やすことができます。収入合算には「連帯債務型」と「連帯保証型」があり、連帯保証型を選んだ場合は、連帯保証人が必要となります。

夫婦の場合、連帯債務型は夫婦二人に同等の債務が発生し、金融機関はどちらかに全額請求することも、半分ずつ請求することも可能です。一方、連帯保証型は夫婦が同等の返済義務を負っている点は同じですが、債務者が返済できない場合に返済義務が発生します。

ペアローンを組む場合

ペアローンとは、配偶者や親などがひとつの住宅に対して、それぞれ住宅ローンを申し込む方法です。ペアローンの場合は、お互いが相手の住宅ローンの保証人になります。

連帯保証人にも年齢制限がある

連帯保証人が必要となる場合は、当然、連帯保証人の年齢も問われることになります。収入合算をする場合は、返済期間は主債務者の年齢で判定されますが、ペアローンの場合はそれぞれの年齢で判定されるので注意が必要です。

住宅ローンを借りる前にチェックすべきポイント

ここでは、住宅ローンを借りる前にチェックすべきポイントについて解説します。年齢だけでなく、様々な視点から住宅ローンの借入れを検討してみてください。

金利タイプ

住宅ローンの金利タイプには、市場金利の変動に伴い返済期間中も金利や返済額の変動がある「変動金利型」、借入れ当初の一定期間は金利が固定される「固定金利期間選択型」、市場金利の影響を受けず借入時点から完済まで金利が変わらない「全期間固定金利型」の3種類があります。

変動金利と固定金利の大きな違いは、市場金利の影響を受けるか否かです。市場金利の影響を受けやすい変動金利は、他の金利タイプよりも借入時点での金利が低く設定されるものの、市場金利が上昇すると返済額が増加するリスクがあります。一方で、固定金利の場合は市場金利の影響を受けず金利が変わらないため、返済額が変わらず返済計画が立てやすいメリットがあるのです。ただし、変動金利型よりも金利が高く設定されていることや、市場金利が下降しても恩恵を受けられないというデメリットもあることに注意しましょう。

金利タイプについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

住宅ローンで選べる金利のタイプとは?それぞれの特徴から選び方を解説

借入金額

どんな年齢の方においても、住宅ローンの借入れでは「いくらまで借り入れできるか」ではなく「無理なく返せる金額はいくらであるか」という視点を持つことが大切です。返済計画を立てずに目一杯借り入れしてしまうと、大きな支出があったり、想定外のことが起こったりした場合などに返済が難しくなってしまう可能性が高まります。住宅ローンは長期的な返済になることから、無理なく返せる借入金額を検討することをおすすめします。

借入期間

今回ご紹介したように、借入時点の年齢によっても借り入れできる期間が異なります。また、定年を過ぎても住宅ローンの返済が終わらない場合は、繰り上げ返済を活用するなど老後の生活費を圧迫しないような返済計画を立てておく必要があるでしょう。ご自身の年齢や定年後の生活も考慮した上で、無理なく返済ができる借入期間を検討してみてください。

返済方法

住宅ローンの返済方法には、毎月の返済額(元金+利息の合計額)が一定である「元利均等返済」と毎月の返済額のうち元金部分が一定である「元金均等返済」の2種類があります。元利均等返済は借入当初の返済額が少ないこと、元金均等返済は元金の減り方が早いので総返済額が少なくなることが特徴です。

低金利の場合は両者の総返済額に大きな差が出にくいこと、元金均等返済を選べない金融機関もあることから、元利均等返済を選ぶ人が多いでしょう。とはいえ、返済方法を選択できる場合は、両者のメリット・デメリットを踏まえてご自身に適した方法を検討することが大切です。

住宅ローンの返済方法については、こちらの記事も併せてご覧ください。

元利均等返済とは?元金均等返済との違いや返済方法の選び方についても解説

年齢要件ギリギリではなく、余裕を持った返済計画を

住宅ローンを組むときには、余裕を持って完済ができるように返済計画を立てる必要があります。もちろん、住宅購入時期は早いほうが余裕を持った返済計画を立てることができますが、ライフプランは人それぞれですから、なかなかそういうわけにもいきません。

ただし、借入時の年齢要件をなんとかギリギリでクリアし、できるだけ長期の返済期間を設定するという借り方はできる限り避けるべきです。当面の毎月の返済額は少なくて済むかもしれませんが、将来、老後の生活費を圧迫してしまうことになりかねません。

「借りられるかどうか」と「返せるかどうか」はまったく違います。長期的な視野に立って返済計画を作成し、場合によっては、購入物件価格や借入額そのものを減らして、現実的な計画を立てていきましょう。

監修

金子賢司

ファイナンシャルプランニング技能士1級と同等資格のCFP ®や、生命保険資格の最高峰であるTLCを持ち、日本FP協会道央支部に幹事として所属。2017年以降は、確定拠出年金・生命保険・ライフプランに関するセミナーを年間50~100件開催。北海道新聞にもコラム掲載の経験があり、執筆活動にも力を入れている。 

監修

亀梨 奈美(かめなし なみ)/住宅ローンアドバイザー

大手不動産会社退職後、フリーライターとして独立。2020年株式会社realwaveを設立し代表取締役に就任。
「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに、メガバンクや不動産会社のメディア、不動産専門紙などで多くの記事を執筆・監修。

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